書誌詳細情報
むらの小さな精米所が救う アジア・アフリカの米づくり

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むらの小さな精米所が救う アジア・アフリカの米づくり
この本のジャンル
解説
日本と諸外国の米づくりの根本的な相違――籾摺り作業を農民がやるか、それとも業者がやるか――に注目し、アジアの米作農村地域に戦後多数出現した籾の賃搗き加工所=農村精米所の果たした役割と意義を詳述。今日、米の増産が求められるアフリカの米作発展の道を描く。
「農民の生活と行動、その文化に無関心でいて、『米作技術の改善』などを唱えるのは、あたかも空気に着物を着せようとするようなものだろう。技術の目的は、なによりもそれを扱うひとびとの幸福の実現にある。」(「おわりにかえて」より)
著者
1931生れ。東大農学部卒。農学博士。(株)サタケ製作所海外部長、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)専門家、インドネシア・ボゴール農科大学客員教授、岩手大学農学部教授等を歴任。著書『農村社会発展と技術』(アジア経済研究所)『日本における農村社会と農機具のかかわり』(共著、国際協力機構)等。
目次
はじめに
第1章 日本だけでおこなわれる米のつくり方
世界で唯一の玄米流通――米の増産と品質改善の要因
日本では脱穀しにくい米品種が選ばれてきた
日本だけで行われる農民の籾摺り作業
日本だからできた「玄米流通」
農家用の籾摺り用具の発展
作物栽培過程と収穫後過程の相違
米作の機械化は米の品質向上のために始まった
機械化進展の意味
玄米流通の抱える問題
――米の収穫後過程とそのための機械
籾を乾燥する/籾からゴミを取り除く/籾を玄米にする/玄米に残る籾を分離する/玄米を白米にする/白米をきれいにする/エンゲルベルグ式機械
第2章 農民が米作に熱心でないとすれば、そのわけがある
米が儲かる作物なら生産はたちまちふえる
籾の「最低買取り価格」は無意味
籾のままでは品質はわからない
「籾買取り」では米の品質は低下
大規模米作ならば籾でも品質相応の価格
小規模米作でも「品質相応の価格」は実現できないか
諸外国では「玄米流通」はできない
「外国にも玄米流通がある」という早とちり
第3章 零細農民には「農村精米所」が救世主となる
米食民族の米作地域には農村精米所が必ず現れる
「うまい米を食いたい」が農村精米所の淵源
農村精米所はすぐに始められる
商業精米所と農村精米所とのちがい
農村精米所の加工賃は安くなり、技術はたちまち向上する
日本には「農村精米所」はない
白米にすれば正当な価格で売れる
農村精米所間の競争が必要
籾で売ると損をする根本的な理由――「加助騒動」の例
白米にして売れば米作意欲も技術も高まる
米の生産や流通は「生活をしているひと」が担うものだ
米の「顔」を読んで技術改善がすすむ
玄米流通と同じく、「品質=価値」となる
農民の技術改善の一例
第4章 農村精米所の波及効果
農村精米所はそれを使わない農民にも役立つ
流通白米の品質も向上する
農村精米所の増加による地域住民の福利改善
農村精米所を否定する意見
農村精米所の技術水準にたいする誤解
農村精米所は商業精米所の技術向上をもうながす
第5章 アジア・アフリカの米の増産と農村精米所
[農村精米所の出現によるインドネシアの奇跡的な米増産]
[ビルマの米流通国営化の悲劇]
[アフリカ諸国における米増産の展望]
結語にかえて――「技術」とはモノではない。社会関係を無視した「技術的解決」などありえない
あとがき
解説(詳細)
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