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農地を守るとはどういうことか

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農地を守るとはどういうことか
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解説
農地が一般商品と同じように自由に売買されてはいけない理由と、「農地耕作者主義」と「むらにおける農地の自主管理」の形成過程と、それが、持続可能社会への転換という文脈において持つ現代的意味を浮き彫りにし、家族経営と農地法の大義を歴史的、理論的に明らかにする。(注)「農地耕作者主義」とは、<経営主宰+農作業従事+土地所有権ないし賃借権>の三位一体、および農地の近傍に生活し、村落社会の構成員として地域社会を担う活動も含まれる概念(資本・経営・労働が三位一体でない、かつ非定住的株式会社との根本的違い)。
著者
早稲田大学法学部教授、法学部長・法学学術院長(現職)。1954年、大阪府生まれ。著書 シリーズ地域の再生『地域農業の再生と農地制度』(共著)、編著『持続可能社会への転換と法・法律学』(早稲田大学比較法研究所、2016年)、論文「ナチス期における所有権思想再考」楜澤他編『民主主義法学と研究者の使命』(日本評論社、2015年)、「ドイツの脱原発は如何に実現されたか」鎌田薫監修『震災後に考える』(早稲田大学出版会、2015年)、「入会のガヴァナンス」秋道智彌編『日本のコモンズ思想』(岩波書店、2014年)、「持続可能社会への転換期における新「所有権法の理論」」日本法社会学会編『法社会学』80号(有斐閣、2014年)、「法の普遍的妥当とコンテクスト(1・2完)農地取引規制法を素材に」(早稲田法学第85巻3号2010年、86巻2号 2011年)等。ほか農業法研究、現代農業などに多数寄稿。
目次
I 土地が商品になるとき
II 日本資本主義と地主制度
III 慣習法より継受法のほうが高級という法学者の態度
IV 日本の農地制度はどのようにして生まれたか?
V むらの土地はむら人の手に
VI 小括――農村の生活秩序と近代的土地所有権:農地制度への展望
VII 耕す者へ農地を:農地改革による農民的土地所有の確立
VIII 耕作者主義:農地の権利主体の生活スタイルに着目
IX 農地の自主管理
3. 「農地の自主管理」とは何か?
4. 事業あっての農地利用権―更新規定のない定期借地権
5. 利用権設定の前提として集団的合意が必要
6. 利用権設定が農地法の適用除外となる理由
X むらがようやく法律の中に姿を現す―農地の自主管理主体(=集落)の法制化
1 農地を農家が自ら保全する仕組み(農用地利用増進法と農用地利用改善事業・団体)
2 農業経営基盤強化促進法による農用地利用改善事業の変質
―自主管理から経営視点への矮小化
3 顔の見える農地賃貸借市場-むらという磁場の中でこそ成り立つ契約
XI 持続可能社会への大転換と農地制度
4 圃場に食卓を合わせる-“消費者のニーズ"なるものに疑いの目を!
5 有機農業と土壌―低投入・内部循環・自然共生
6 「食料・農業・農村基本法」により耕作者主義は新しい意義を与えられた
XII.農地の自由な取引を規制しているのは日本だけ?
1 スイス憲法は農業条項を持っている
2 農民経営への国家による支援
3 農地の維持は農家の維持
4 スイスにはなぜ耕作放棄地がないのか
5.オーストリアにおける農林地取引規制
6.欧州共同体創設条約との抵触?
7 ドイツにおける農林地取引規制とその根本的考え方
8.農業構造政策と農林地取引法
XIII 戦後農地法制における「二つの基本理念」「二つの法制」とその相互関係
-国家とむら
1 一国二制度の病理現象?
2 一筆統制と面的自主管理―持続的生産を確保するための2要件
3 国家による入口規制と社会による事後規制の相互補完
4 市場規制法と事業計画法の相互補完
5 二つの法原理の結節点としての農業委員会
XIV.企業の農業参入要求と農地法制の改変―農地法制が危ない
1 農業の担い手像はどのように変容したか
2 農地法制の展開基調とその前提としての担い手像
3 耕作者主義の否定
4 農地の自主管理の否定
おわりに