書誌詳細情報
人間選書218 システムとしての<森-川-海>

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人間選書218 システムとしての<森-川-海>
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解説
駿河湾、富山湾など、良い漁場には植物プランクトンを豊富に含む良い水が流れ込み、その上流には豊かな森林があった。江戸時代の人々は魚付保安林の育成にみられるように、地域の森・川・海をひとつのシステムとしてとらえ、管理していた。そのしくみは、明治以降、近代的な殖産興業政策、国有林化などによって急速にくずれ、ばらばらに管理されるようになっていく。漁民による植林活動など、近年見直されてきた海と森の結びつきを実証的に解明し、地域の合意にもとずく森・川・海の新たな管理と利用の方法を大胆に提言する。
解説(詳細)
序 システムとしての<森-川-海>
T いのちをつなぐ水
0.0001パーセントの河川水
海の成分を調節する海洋生物
よい漁場には酸素・炭酸ガスが多い
海洋生物に必要なミネラルは山からくる
日本の水資源と治水思想
黒部のダムと沿岸漁業
U 森はいのちの泉
人口の増加と森の後退
明治以前の人と森とのつきあいに学ぶ
多彩な森林の役割
ブナは森林の母
V 森が生み育んだ漁場
海に流れこむ真水と漁場
地中海-「紺青の地中海」は貧栄養の証拠
駿河湾・遠州灘-イワシのシラスとサクラエビは川の水が育む
オホーツク海-アムール河が生んだ流氷がプランクトンを増やす
北海道のホタテガイ漁場-川が集まる「ベンベ」が好漁場
サケとウナギ-産卵と成長に欠かせない淡水圏
青森県鰺ヶ沢-白神山地のブナ林伐採が与えた漁場被害
厚岸湖-ベカンベウシ川上流の森が消えてカキも消えた
屋久島のあたり-「森の島」が産卵場を生み出す
W 森と海を結ぶ魚付林
明治以降衰退した魚付林
魚付林の分布と樹種
森と魚-魚付林の効用
X 森が消えてニシンも消えた
消えたニシンの謎を追う
マイワシの周期変動とは違う
磯焼けはニシンを消したか
Y <森-川-海>を管理する新しいシステムを求めて
森・川・海の管理主体はだれか
利用者と所有者が切り離されて荒廃した森
森の公益的機能を守る
新しい河川管理の方向
漁業に残る「総有」の思想
再び流域主導の管理に
海の人の手で山を緑に
■著者紹介
長崎福三(ながさき・ふくぞう) 1926年東京生まれ。東大農学部卒。農学博士。日本鯨類研究所顧問。「くじら博士」の異名を持つ。漁業にとどまらず、海洋資源・環境問題から魚食文化まで広い視野と洒な語り口で人気。国際海洋シンポジウム’97(日本財団主催)基調講演者。著書『狭い海』(UP選書)、『肉食文化と魚食文化』 (農文協)
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