農・食・健康・むらづくりで新時代を拓く
「月刊「現代農業」を飾ったカリスマ人物伝フェア」
第1回 井原 豊

省力・低コストの「への字型イナ作」、自給資材で有機栽培、直売・産直…明日の見えない苦難の時代に、農業の「明後日」を拓く種をまいた昭和の鬼才
「農業に明日はない。しかし明後日がある」など、「現代農業」誌上に数々の名言を残して、1994(平成6)年1月3日、享年67歳で逝った兵庫県の兼業農家である。 「現代農業」への登場は,1980(昭和57)年9月号「平均年齢48歳の"4Hクラブ"」(別冊現代農業『現代農業ベストセレクト集』収録)。当時,井原さん51歳、減反・米とるなの政策に対して、こう喝破した。
「私ら中年のレジスタンス。米をたくさん穫るのは非国民だ、なんて言うのはパン食商工業民族であって、われわれと同じ民族ではない」
近所の兼業農家10人で始まった独自のイネつくりの様子は、井原さんの筆によって、連載「オールド4Hクラブ奮戦記」(昭和56年新年号から)に結実していった。ノーパンスケスケ稲、毛糸のパンツ稲、ゴリラのガッツポーズ稲など突飛な表現で表わされる革命的な稲作技術、それが「への字稲作」である。当時主流の密植して生育中期に肥効を抑制する「V字イナ作」に対して、疎植にして元肥ゼロないし極力減らし、出穂50〜40日前にどかんと追肥一発。省力・低コストの革新技術として瞬く間に全国に広がっていった。
イナ作にとどまらず、単肥を使った驚くべき野菜つくりは『図解 家庭菜園ビックリ教室』、『野菜のビックリ教室』にまとめられている。たとえばトマトはヒョロヒョロ老化苗にして,長い茎を土中に寝かして植え、芽先だけ5〜10cm土の上に出して足でよく踏みつけておくとよいとか、コンパニオンプランツを生かした混植の技、さらには自然農薬ストチューの作り方と使い方など、ビックリ!の連続。農家はもちろん家庭菜園愛好家のバイブルとして今も読み継がれている。
●早すぎる死を悼む痛切な声 井原豊追悼集
(残部僅少。一般書店では販売しておりません)
井原さんの功績を多数の寄稿により振りかえる。井原さんの魅力と遺稿を収録。井原豊追悼集刊行会編。
※在庫切れのため、ご注文いただくことができません。
享年67歳という早すぎる死。革新的な農業技術、経営感覚、そしてなによりもその人柄を偲ぶ農業者、編集者ら有志によって自主出版されたのが本書。井原さんを師と仰ぐ多くの農家からも哀悼の文が寄せられた。

「食と農の応援団」より
山下惣一
世の常識をいとも簡単にくつがえし、しかも実践でそれを実証するというところが井原豊の真骨頂であろう。世の中にすごい百姓がいないわけではないが、彼の彼たる所以は先入観や常識にとらわれることなく、まったく自由に発想するというところだ。

「食と農の応援団」より
宇根豊
減農薬運動の裾野は井原さんの力で、さらに広がりました。収量だけでなく、稲作を豊かなまなざしで見る新しい時代の稲作理論の扉が開かれました。

「食と農の応援団」より
稲葉光國
「への字稲作」の目指す内容は21世紀の時代環境を先取りする先見性をもった稲作理論として汲めど尽くせぬ多くの示唆を私たちに与え続けている。

(1994年1月撮影)
上野長一 栃木県・農家
一見手抜き栽培に見えるようですが、本当は作物自身、一粒一粒の命を大切にした育て方であるのです。
牛尾武博 兵庫県・農家
私の知る限り、井原さんのような、オールマイティな百姓は、二度と出ないと思っている。それほどの巨星だった。
塚本道夫 福井県・農家
井原さんはいつも理想を生のまま振り回すことなく、現実の地を這うような行為の段階に引き下ろして語ってくれた。だから聞いていて無理がなく、多くの農家の支持を得たのだと思う。それは経営者である井原さんの抜群のバランス感覚である。
ほんの一部を紹介させていただいたが、どの文章からも死を悼む痛切な思いが溢れていて、改めて井原豊という存在の大きさを思い知らされる。
減農薬、低コスト、中期重点施肥の"への字型"稲作を、各生育段階を追って写真で解説。
※在庫切れのため、ご注文いただくことができません。
省農薬、省肥料で安定多収、金が残るイナ作のやり方を全公開。痛快かつ豪快なイネつくりの本。
※在庫切れのため、ご注文いただくことができません。
コシヒカリを中心に倒れやすい良質米品種を省肥料・省農薬で倒さない"への字稲作"のすべて。
※在庫切れのため、ご注文いただくことができません。
凝れば凝るほど増収でき、コストはごくわずかのムギつくりの楽しさを余すところなく紹介。
※在庫切れのため、ご注文いただくことができません。
●読者カードより
自家用に年間30種類位の野菜を作りはじめて3年になります。貴書と出会って昨年よりもずっと能率的に仕事を進められるようになりました―千葉県の方
JAの講習会のビデオをみて、とても参考になり、野菜づくりにもっと力を入れようと思った時、この本をすすめられて、うれしく、一層勉強して野菜をつくり健康管理につとめたいと思いました―兵庫県・主婦
大変よい参考になりました。戦後サラリーマン生活から農地法のため農業を営んだ経験がありますが大変良い勉強になりました―千葉県・自営業
施肥のまちがいから野菜別ポイントまで、農薬使わずうまい野菜を作る知恵と工夫が満載。
※在庫切れのため、ご注文いただくことができません。
●読者カードより
新農法に対してメスを入れ昔の耕法を取り入れるなど斬新的な農法で大変参考になりました―長野県・農家
最近の農業法を見直す色々な要点があり感心しました。配合肥料に偏りすぎた時代の盲点をついています―福島県・兼業農家
表題通り読んでビックリ。素人ではあるが病害虫に悩んで居る一人。勇気づけられ又面白く読んだ―山口県・無職
●関連リンク
「ルーラル電子図書館」では会員になると井原豊の過去の「現代農業」掲載記事を読むことができます
