書誌詳細情報
楮(こうぞ)・三椏(みつまた)

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楮(こうぞ)・三椏(みつまた)
この本のジャンル
解説
大学で教鞭をとりながら和紙の里の高知県いの町柳野でコウゾ・ミツマタを実際にも栽培している大学教授と、50年間和紙に使われた繊維を分析調査することで、古代から現代まで古典籍・古文書に使われているあらゆる和紙の製造技法と使われた植物繊維の特徴を解明してきた製紙会社研究員(和紙の鑑定士)を中心的な著者に得て、和紙の原料であるコウゾ・ミツマタ・ガンピの栽培と和紙への利用をまとめた。
著者
■田中求(たなかもとむ、高知大学地域協働学部講師、2004 年東京大学大学院農学生命科学研究科・森林科学専攻博士課程修了、東大助教、九州大准教授を経て現職。専門は環境社会学・林政学・地域発展論。高知県いの町柳野集落に住んで楮・三椏の栽培に取り組む)
■宍倉佐敏(ししくらさとし、宍倉ペーパーラボ主宰、元特種製紙総合技術研究所、静岡県沼津市生まれ日大短期大学部卒後特殊製紙総合技術研究所勤務。製紙用植物繊維の研究を主に画材用紙、保護・保存用紙、ファンシーペーパー、再生紙の開発に携わる。2005年退職後は宍倉ペーパーラボを主宰。紙の温度株式会社技術顧問、特殊東海製紙テクニカルアドバイザー、女子美大特別招聘教授、日本鑑識学会会員(紙の分析)、日本の紙料調査の第一人者)
■冨樫朗(とがしろう、愛知県豊田市豊田和紙のふるさと館館長。農文協「和紙の絵本」著者)
目次
カラー口絵
はじめに
■1章 植物としての特徴
学名・形状・分類・原産地と来歴・楮繊維の特徴
コウゾ(楮) ミツマタ(三椏) ガンピ(雁皮)
■2章 和紙―植物繊維利用
植物繊維と和紙
和紙の特徴
和紙と洋紙の違い
流し漉きの優位性
ガンピの利用とトロロアオイ、ノリウツギ
手漉きと機械漉き
原料になる植物繊維
ワタ/コウゾ/苧麻(ちょま、ラミー、カラムシ)/亜麻(リネン)/大麻/
黄麻(ジュート)/針葉樹/広葉樹/マニラ麻/バナナ/稲ワラ/ワラ紙の歴史/
麦ワラ/エスパルト/アシ/タケ
和紙の製法
初期の和紙原料と製法
和紙製造の基本工程
溜め漉き
半流し漉き
流し漉き
紙漉重宝記と現代の手漉き和紙法
紙を加工する技術 (打ち紙 米粉 ドーサ処理 染色 補強法)
囲み 手で紙を漉いてみる
■3章 使われた原料からみた和紙の歴史
植物繊維の利用と紙の発明
衣料から紙へ
古典籍・古文書の「料紙調査」とは何か
蔡倫と紙漉き法
紙の日本への伝来
古代の古典籍・古文書の紙
律【史料の性格】【所見】
延喜式 正倉院流出文書 大蔵経 荼毘紙 百万塔陀羅尼
中世の古典籍・古文書の紙
扶桑略記 六波羅探題御教書 平宗盛書状 金沢貞顕書状
戦国武将と紙
近世の古典籍・古文書の紙
檀紙 奉書紙 杉原紙 藩札・私札 わら紙
近代の古典籍・古文書
明治初期の切手の素材
奉書紙
昭和初期の各省庁で使われた事務用紙の特徴
現代の和紙利用
■4章 各地の和紙と植物繊維の利用
各地の和紙
吉野紙/芭蕉紙/局紙/箔合紙/土佐典具帖紙/精光箋/麻紙/出雲民芸紙/
鳥の子紙/箔打原紙/泥間似合/
世界遺産認定の和紙(石州半紙・本美濃紙・細川紙)
原料による和紙の違い
原料としてのコウゾ・ミツマタ・ガンピの特性
ミツマタ・ガンピでつくる高級紙
植物繊維の利用
■5章 栽培
コウゾを栽培する
原料としての質を追求する栽培を
産地と栽培適地
品種とその特徴
栽培方法
農事暦/枝を伸ばす/枝の靱皮繊維/枝の伸び/枝の剪定/
枝を伸ばすための施肥
除草/苗木とその育成/収穫/蒸し剥ぎなど加工方法/病虫害対策
ミツマタを栽培する
ガンピを栽培する
■6章 紙を漉く
写真構成 紙を漉く
紙漉きの原理と工程
繊維化=原木から白皮までの白皮加工
白皮を漉く紙漉き(紙漉き工程)
煮熟/さらし/ちりとり/叩解/
解説(詳細)
薄くても丈夫で美しい和紙を生むもとはトロロアオイの根っこ。手漉き和紙の原料液では、この根を煮詰めて取り出した粘液をコウゾなどの繊維に混ぜます。ネリとよばれるこうした、植物性粘液のおかげで、汲み上げた原料液は漉き簀の中でやや長く滞留するようになり、コウゾ繊維は水中で、均一によく広がって絡み合うようになります。ここから薄くても丈夫な和紙が生まれました。奈良時代に開発された「流し漉き」技法では、こうしたネリ材植物が重要な役割を果たします。トロロアオイのほか、ノリウツギ、ビナンカズラ、アオギリ、ギンバイソウなどもネリ材になりました。身近な植物が技法を支えています。
【関連書籍】
「地域素材活用 生活工芸大百科」
「つくってあそぼう27 和紙の絵本」
「生活工芸双書 漆(うるし)1」
「生活工芸双書 桐(きり)」