書誌詳細情報
農協の大義(農文協ブックレット10)

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農協の大義(農文協ブックレット10)
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解説
なぜ日本の農業協同組合は総合かつ系統農協でなければならないのか、なぜ農業委員会は農家による選挙を経た委員会でなければならないのか、などの視点から、規制改革会議の「意見」を地方・地域社会を破壊するものとしてその無知・暴論を逐条的に徹底批判。併せてわが国社会インフラの一環としての農業、農協諸制度の因って来る歴史的形成過程とその必然性、および今後の自主改革への道を提言。
著者
太田原高昭(おおたはら たかあき)
1939年福島県県会津若松市生まれ。1968年北海道大学大学院農学研究科博士課程単位取得。1990年北海道大学教授(農業協同組合論講座担当)、同大農学部長、大学院農学研究科長、日本協同組合学会会長、日本農業経済学会会長などを経て、2003年北海学園大学経済学部教授。
現在、北海道大学名誉教授、北海道地域農業研究所顧問。
主な著書 『明日の農協』(共著)1986年、農文協、『系統再編と農協改革』1992年、農文協、『農業経済学への招待』(共編著)2001年、日本経済評論社、『新北海道農業発達史』(編著)2013年、北海道地域農業研究所、『農業団体史・農民運動史』(共編著)2014年、農林統計協会。
目次
1 戦後レジームからの脱却と"非連続な"農業・農協改革
(1)異常な文書:規制改革会議「農業改革に関する意見」
(2)危機を招いた農政の責任を農協に転嫁
(3)経済民主主義と協同組合の役割についての徹底した無知、無見識。
(4)本書の構成
2 中央会制度の「廃止」と農協農政活動
(1)農協中央会が生まれた歴史的経緯
(2)単協の独自性発揮と地域農業の発展
(3)貧弱な中央会廃止論の根拠
(4)真の狙いは国際化農政推進に邪魔な全中農政活動の抑圧
(5)TPPへの最大の抵抗勢力潰し
3 全国連合会なくして協同組合の発展はない
(1)連合会は協同組合運動の必然の産物
(2)産業組合時代の連合会と反産運動
(3)産みの苦しみを経た自主的改革の歴史
(4)独占禁止法適用除外の重要な意味
(5)経済連統合の多様な姿と地域農業
(6)全県共販で農家と地域を守る全農長野
(7)北海道米を躍進させたホクレン
(8)全農バイイングパワーの国民経済的意味
4 単協から切り離せない信用事業と共済事業
(1)単協の専門化・健全化とは何か
(2)信用事業は農協の原点である
(3)単協の信用事業は営農指導・生産活動と一体
(4)経済事業の発展を支える信用事業
(5)単協における共済事業の実際
5 総合農協と専門農協の歴史的展開
(1)信用事業の無い専門農協の弱点
(2)農協の欧米型と日本型の歴史的背景
(3)「総合」を必要とした日本農業と農家の構造
(4)農協法を巡るGHQと農林省の論戦
(5)複合経営の発展と総合農協の成長
(6)日本型総合農協の国際評価
6 総合農協を解体させてはならない
(1)「組織形態の弾力化」という分断・解体策
(2)ライフラインとしての農協生活関連事業
(3)農協の厚生事業」=地域医療の先駆者つぶしをねらう時代逆行
7 理事会のあり方への異常な介入
(1)理事は組合員が選ぶ
(2)非農業者中心の農協運営とは
(3)兼業農家が認定農業者を育てる
8 農協の准組合員をどう見るか
(1)事業利用を制限してよいのか
(2)准組合員とはどういう人か
(3)健闘する都市農協・JAセレサ川崎
(4)嚢果と農協のパートナー、サポーター
9 行政と農協の関係はどうあるべきか
(1)農協に業務代行させてきた行政
(2)農協の使い捨て宣言
(3)「制度としての農協」から対等なパートナー
(4)自立した共働雲合いとしての農協
10農地を守る農業委員会への攻撃/
(1)"むらの農地法の番人"の排除
(2)農業会議、全国農業会議所の廃止
(3)担い手を増やすむらの論理
(4)日本社会の公共財を守る農業会議
11農地を所有できる法人の拡大
(1)農業生産法人の要件を大幅に緩和
(2)農外者の支配的地位の確立を目論む
(3)株式会社の農地所有に道を開く
(4)国民にとっての悪夢のシナリオ
12国際的批判を浴びる安倍農政
(1)協同組合連絡協議会の共同声明
(2)国際協同組合同盟の厳しい批判
(3)国際家族農業年/FAO委員会の重要な指摘
(4)日本の小規模家族農業の国際的意義
(5)普遍性の高い日本型総合農協
13消費者、国民と共に歩む農協へ
(1)TPP前提の無展望、無責任な改革案
(2)国民との合意をめざす農政運動
(3)排除と選別の論理でむらは動かない
(4)農協の立脚点と改革の課題
参考文献
【資料】規制改革会議「農業改革に関する意見」
解説(詳細)
単協重視のように見える安倍や規制改革会議の意見はじつは農協潰しである! その農業農協攻撃を撃退する理論的ポイントを単協〜系統の実践例もまじえ解説。同時に本書は、日本社会の歴史と現実に照らして、そもそも(農業)協同組合とはいかに発生、発展してきたのか、その国際的評価の高まりも紹介しながら「社会的・国際的公共財」としての日本の農協、農業委員会、農地法等の意義を学び理論武装できるテキストでもある。全ての農協マン、協同組合人必読!
■関連書
「ブックレット 規制改革会議の「農業改革」 20氏の意見」
「家族農業が世界の未来を拓く」
「集落営農の事例に学ぶ 集落・地域ビジョンづくり 」
【第27回日本農業研究所賞受賞】
著者の太田原先生が日本農業研究所賞受賞(平成27年度)を受賞されました。